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2016年冬期路上生活者概数調査(東京都実施)の結果を受けて

2016.06.15

2016年1月にARCHで実施した「2016東京ストリートカウント」と同時期に行われた東京都による路上生活者概数調査の結果が2016年4月28日に公開された。これにより、当年同時期の比較が可能となったことを受け、短評を記す。

 

東京都による路上生活者概数調査(以下概数調査)は、道路・公園等各管理者により昼間に目視調査された路上生活者人口を東京都がまとめたものである。

(平成28年冬期 路上生活者概数調査の結果|東京都 :http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2016/04/60q4s100.htm)

 

●東京都による路上生活者概数調査結果の概要 (東京23区)

 

今回の概数調査によれば、東京23区での路上生活者数は1319人であった。東京23区での近年の冬期概数調査による結果をまとめたものが下図である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


この図では、都区管理施設(道路、公園、河川、駅舎、その他)での概数の変化と国管理河川での概数の変化を分けて示している。これを見ると、都区管理施設では、2008年以降2,3百人/年の割合で減少してきていたが、今年は前年比34人減と、減少率が大幅に鈍化していることが分かる。また、今年の23区内の国管理河川分は前年比17人増と、2008年以来初めて増加に転じた。総じて、東京23区全体では、前年の1336人と比べ17人減となった。

 

●東京都による路上生活者概数調査結果の概要 (2016年東京ストリートカウント対象3区)


2016年1月にARCHで実施した「2016年東京ストリートカウント」で対象としたのは渋谷区、新宿区、豊島区の3区である。これら3区の概数調査の結果は、渋谷区107人(前年比17人増)、新宿区97人(前年比27人増)、豊島区35人(前年比12人減)であった。下図は渋谷区、新宿区、豊島区の3区の近年の冬期概数調査結果である。

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渋谷区と新宿区は今年増加となり、特に新宿区では、2009年以降初めて増加傾向を示した。

 

●2016東京ストリートカウントとの比較

ARCHで実施した東京ストリートカウントでの結果と比較したものが下表である。4月に実施したストリートカウント公開報告会では、2015年1月に実施された概数調査(東京都実施)の結果と比較していたため、倍率などについて改めて算出した。

東京ストリートカウントで対象とした3区では、都調査の約2.8倍の方が野宿状態であることが分かった。

 

また、この結果を用いて行った東京23区における路上生活者数の推計値は約2700人であった。(概数調査における東京23区の結果である1319人の約2.02倍)推計方法については、2016ストリートカウント公開報告会にて説明した方法と同様の方法をとった。(詳しくはこちら)

 

もちろん、今回ストリートカウントで対象とした3区はいずれも大きなターミナル駅を抱えており、昼夜間の差がほかの区に比べても大きいと考えられるため、この推計値の妥当性には検討の余地があるといえる。

それでも23区内で約1300人という概数調査の結果よりも多くの方々が夜間路上生活をしていると推測される。これだけの方々が路上生活を送る状況にあるという事実に、まずは真摯に目を向けていく必要があるだろう。

加えて、概数調査では国管理河川での人数が今回微増している。河川という「見えにくい場所」や夜間という「見えにくい時間帯」に真摯に目を向け、実態が不可視化しないような努力を続けることが必要であると私たちは考えている。そのための一つの機会として、ストリートカウントは今後も継続して実施していきたい。

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