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2016.4.10.「東京ストリートカウント公開報告会」質疑を受けて

2016.06.XX

 ここでは2016年4月10日に行った東京ストリートカウント公開報告会の質疑応答パートでいただいた質問の紹介とそれらに対するARCHの見解を述べます。

 

 公開報告会の質疑応答パートでは、会場の皆さんから多くのご質問やご意見をいただき、貴重な意見交換の時間となりました。当日は時間の関係上全てにお答えすることはできませんでしたが、頂いた貴重なご意見やご質問は今後のARCHの活動を考えるうえで参考にさせて頂きたいと思います。

 ここでは、今回行ったストリートカウントに関連した内容や「ホームレス」に関する統計的な情報に関する具体的なご質問に対して一つずつお答えします。また、上記以外でARCHの今後の取り組みなどに関する大きなテーマのご質問に対しては、いくつかの質問に対してまとめた形で見解を示します。(※下記よりページ内該当箇所へ進むことができます。)

 

>ストリートカウントやホームレスに関する統計的な情報についてのご質問

  -ストリートカウントの調査方法や設計について

  -ストリートカウントで分かった実態について

  -調査の今後の展開について

  -推計値について

  -国内行政のホームレス統計について

  -海外のホームレス統計について

  -その他

 

>上記以外のご質問

  -他分野との関わり・今後の協働について

  -ARCHの今後の展開に関して

  -他の立場の方の意見・態度について

 

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>ストリートカウントやホームレスに関する統計的な情報についてのご質問

 

 ここでは、今回行ったストリートカウントに関連した内容や「ホームレス」に関する統計的な情報に関する具体的なご質問に対して一つずつお答えします。

【ストリートカウント調査方法や設計について】

 

■なぜ渋谷区、新宿区、豊島区の 3 区を対象地に選んだのですか?

 

 大きな理由として、東京都による路上生活者概数調査(以下、概数調査)において路上生活者人口が多い地域であること、かつ2020年東京五輪・パラ五輪に向けた開発等の影響が予想される地域であるということが挙げられます。その他の理由としては、当該3区にターミナル駅が存在することから、昼夜間の路上生活者人口の差が大きいと予想されたこと等が挙げられます。

 

■路上生活をしているとみられる人というのはどのような人を指すのですか?目視でホームレス状態にある方か否かを判断するのは難しいのでは?

 

 今回の調査は終電後の深夜に行ったため、多くの方が調査時に路上で寝ている状態でした。

 寝ておられない方に関しては、調査を行った班に一人以上はアウトリーチ経験のある方や日常的にホームレス支援・研究に関わる人に入って頂き、各班に判断を委ねました。移動している方などで判断が難しかった場合は、そのときの特徴・状況を記入して頂いた上で、記入内容をもとに慎重に検討しました。路上生活をしているとみられる人は、個々人のケースによるため一概にどのような人と指すことはできませんが、缶を大量に集めている等の特徴が判断する上で参考となることはあります。しかし聞き取り調査等は行っていないため、誤差が生じた可能性は考えられます。

 

■コンビニのイートインコーナーや 24 時間営業のファストフード店などはどのようにカウントしたのですか?

 

 今回の調査は主に屋外におられる方々を対象としたため、基本的に店舗内に入っての調査は行いませんでした。しかし店舗の外からでも確認できるところなどで、店舗の中にいる方が記録された箇所はありました。

 

■今回ボランティアはどのように募ったのですか?

 

 ARCHウェブサイトで告知を行った他、主に福祉系や都市系の研究者や学生、各区のホームレス支援団体の方を通して呼びかけをしていただきました。また、新聞でボランティア募集の記事を掲載いただきました。

 

■東京ストリートカウントと東京都の調査範囲は全く同じなのですか?

 

 東京都は各区の詳しい調査範囲を公表していないため、全く同じかは不明です。一方で今回のストリートカウント調査範囲は、各区の支援団体の方からの情報提供や参加者を交えた事前のミーティング、独自に行った予備調査を経て決定しました。大きなターミナル駅周辺に関しては徒歩により隈なく調査し、区内外周部に関しては車で各ポイントを周る形をとりました。

 

■記録項目に、おおよその年齢層などを入れると良いのではないでしょうか?

 

 今後の検討事項としたいと思います。ただ、深夜の調査、かつ聞き取り調査ではないため正確な判断の難しいケースが多いことが予想されます。

 

【ストリートカウント でわかった実態について】

 

■場所分類の「その他」に集計されたのは、具体的にどのような場所ですか?

 

 場所分類の「その他」として、東京都の調査項目と合わせるために統合・集計したのは、実際の調査で使用した記録シート上の「公共施設」「その他施設」の項目です。具体的な場所に関しては、「公共施設」で主に公民館・図書館等、「その他施設」で主にオフィスビル・商業施設等が挙げられます。

 

■調査から分かった、ホームレス状態の人たちの特徴や場所の共通点を一部教えてほしいです。(- 駅に集まっている人たち - 一人離れた場所にいる人 - 固定型/移動型 - 集住が見られる場所)

 

 分析結果の例として、常設の小屋やテント(分析上の「固定型」)の殆どは、道路や公園でみられたこと等が挙げられます。 詳しい分析については、公開報告会での分析結果における「クロス集計(場所分類×野宿の状態)」をご覧ください。

 

■3 区の都市的な特徴と調査結果の相関関係について何か分かったことはありますか?

 

 分析結果の例として、各区で「道路」以外の場所分類について、「公園」、「駅」、「その他」の割合が異なる傾向がみられ、各区の空間的要素が影響していると考えられること等が挙げられます。詳しい分析については、公開報告会での分析結果における「場所分類による集計」及び「野宿の状態による集計」を覧ください。

 

【調査の今後の方針について】

 

■オリンピック後も含め、今後継続して調査を行っていくのですか?

 

ストリートカウントは今後も継続、拡大する方向で行っていく予定です。時期や頻度、方法については現在検討中です。ARCHでは、2020年に行われる東京オリンピックを一つのマイルストーンとして捉えています。オリンピックに際して見た目だけのきれいな社会ではなく、東京に住んでいるさまざまな人々が見守りあい、助け合える社会を目指しています。そのためのひとつの契機としてストリートカウントを位置づけています。皆さんの参加をお待ちしております。

 

■いわゆるネットカフェ難民など、「見えないホームレス」の調査についてはどのように考えていますか?

 

ストリートカウントではわからない、不安定居住状態を含めた見えないホームレス状態の方々の調査は必要なものだと考えております。ストリートカウントの中で言えば、今後サンプル的に(部分的に)ネットカフェ等の調査を行うことも検討中です。

 

■ホームレスの方への聞き取り調査を行うことは検討していますか?

 

 聞き取り調査について重要性は認識していますが、ストリートカウントの調査の中で実施することは現在は考えていません。

 

■調査活動に中高生も積極的に参加できるようにする予定はありますか?

 夜間に行うストリートカウントに参加して頂くのは現状として難しいと思いますが、中高生など未成年の若い方々も参加できるような調査、企画を行う可能性は視野に入れています。

 

■今後ストリートカウントの規模を広げる上で、どのように広報を行っていく予定ですか?

 

 都内の大学、ボランティアセンターなどへの呼びかけや、新聞等メディア、SNSなどでの広報を行う予定です。

皆さんの参加も心よりお待ちしております!

 

■夏のストリートカウントでは、路上生活者数が増えることが予想されるのでしょうか?

 夏季は気温が高く、冬と比較して野宿しやすい環境ではあるため、路上人口が増えると考えられます。都による概数調査(夏期:8月、冬期:1月または2月の昼間に実施)の結果でも、夏期の路上生活者数の方が冬期に比べて多くなっています。しかしながら、冬における昼夜差と夏における昼夜差の関係がどうであるかは不明であるため、夏の夜間調査が必要であると言えます。ただ、冬に比べて恒常的にホームレス状態なのか否かの判別が難しいことなど、夏季特有の検討が必要な事項もあると考えられます。

 

【推計値について】

 

■今回の対象 3 区はターミナル駅を有する、大きな河川を含まないなど特殊な地域なので、この結果を用いて東京都全 体の推計を行うのは妥当ではないのでは?

 

 国管理河川については、昼夜間の人口差が小さいと考えられるため、前年同時期の都概数調査の数値をそのまま用いて推計を行いました。

 今回対象とした3区はいずれもターミナル駅を有しており、昼夜間人口差が相対的に大きい区であると考えられるため、推定倍率(3.3倍:対象3区におけるストリートカウント調査結果の対前年都概数調査結果比)を他区にも同様に適用することの妥当性は検証する必要があると考えています。しかし、限定的な地域ではあるにせよ夜間の調査を実施したことにより、こうした推計が可能になったと言えます。

 

【国内行政のホームレス統計について】

■なぜホームレスの人たちには男性が多く、女性が少ないのでしょうか?

 既存の調査でも女性の路上生活者は男性に比較して非常に少ないという結果があります。(ただし「2016東京ストリートカウント」は夜間の目視調査ということもあり、性別が確認できたケース自体が非常に少なかったことに留意したい。)

 女性の路上生活者が男性に比較して非常に少ないことについては、報告会の質疑の中でも意見が交わされました。女性の方が路上で生活する場合の危険性が高いことなどから何らかの支援につながるニーズが高い、或いは路上に至る以前に婦人保護施設、母子生活支援施設など女性を対象とした別のセーフティネットにつながるルートがあること、女性の方が男性と比較して社会的ネットワークが強いこと、などが理由として挙げられました。

※不安定居住状態を含めた広義の「ホームレス状態」まで考えると、女性は「野宿状態」よりも「隠れたホームレス」となりやすいという指摘もあり、目に見える傾向だけでは捉えきれない部分もある。(丸山里美「女性ホームレスとして生きるー貧困と排除の社会学」に詳しい。)

 

■都の概数調査において、なぜホームレス人口は減少し続けているのでしょうか?

■行政の支援策があり、ホームレス人口も減少しているならば、現状で特に問題ないのでは?

 

 減少要因としては、路上生活者人口が激増したとされる1990年代と比較すると雇用環境など社会状況が変化したことや行政による施策がなされたこと等が挙げられるでしょう。

 しかしながら、2016年1月の概数調査ではこれまでより減少率が鈍化しており、かつ河川やいくつかの区では増加している場合もあることから、昼間の目に見える形での路上生活者人口の減少は頭打ちの局面を迎えていると考えられます。

これまでの都の施策は昼間の概数調査を基本的な情報として立てられていることから、今回のストリートカウントで見られたような夜間のみ野宿をしている方や、不安定居住状態など見えにくいホームレス状態にある方など、目に見えない形でのホームレス状態へのアプローチは再考する必要があると考えます。

 

【海外のホームレス統計について】

 

■海外の都市では、ホームレス人口調査を夜間にやっているのですか?

 

 公開報告会の中で提示した世界の主要都市での路上生活者人口ランキングは、大ロンドン庁による資料を紹介したものです。

都の概数調査の結果が用いられていたことから、各都市での調査の時間帯が確認されているかは不明です。しかしながら、少なくともARCHメンバーが過去に調査経験のある、オーストラリア、アメリカ、英国各都市でのストリートカウントは夜間に実施されています。

 

■世界の様々な都市を比較した際、ホームレス人口の多い都市と少ない都市で、行政政策的な違いはありますか?

 

 ARCHメンバーが過去に調査を行った海外の各都市におけるホームレス政策等についてはこちらをご覧ください。

各都市により主管となる部局や施策内容、他分野や民間セクターとの協働状況など違いが見られます。こうした海外の施策や実践についての情報を共有する場については今後も企画したいと考えています。

  

【その他】

 

■ホームレスの人たちと一般利用者が共存できるようにするには、公共空間のデザインをどう改善しうるでしょうか?

 

 近年、公園等ではホームレスの人が寝ることができないようデザインされたベンチが見られますが、そうすることで結果的に高齢者や他の人々も使いづらい形になっている場合があります。誰かが使いにくいデザインは結果的に他の誰かにも使いにくい場合があると言えます。

 公共空間は誰もが快適に利用できるよう一定の行為への規制があってしかるべきだが、それが特定のグループの利用を制限するものになってよいのか、という観点もあります。様々な人々が利用し得る公共空間の形のデザイン、運用や利用のデザインについても今後検討したいと思います。

 

 

■2020 東京五輪の会場や選手村の立地と、ホームレスの人たちの居場所の関係はどうなっているのでしょうか?

 

 2020年五輪・パラ五輪の競技場の多くや選手村は都心部に位置している。参加国の事前合宿等を受け入れるホストタウンとなっている都市については東京都周辺にも複数ある。こうした状況から、五輪関連施設を有する都市と東京圏のホームレス人口が多い都市にはある程度重なる部分もあると考えられる。

一般に五輪のような大規模イベントに関係する都市では再開発も進むことから、路上生活者への影響は今後注意深く見る必要があると言える。同時に、五輪に向けた一時的な雇用増加なども考えられ、五輪後の影響まで見据えることも重要であろう。

 

■当日の発表の中で、都の掲げる「全てのホームレスを地域生活へ移行」するという目標自体、良いものかどうかという お話がありましたが、どのような意味で言っているのでしょうか?

 

 公開報告会の中では、「東京都長期ビジョン」における「2024年までにすべてのホームレスを地域生活に移行」という目標に対し、前提としている2014年の路上生活者人口についても、夜間の実態が鑑みられていないことから、再考する必要があることを指摘しました。

加えて、実際には長期に渡って野宿している方もいれば、日によって路上と不安定居住を行き来している人もいます。概数調査やストリートカウントの結果は謂わば「瞬間値」であり、それを「ゼロにする」という目標設定自体の妥当性も考える必要があると言えます。

即ち、不安定居住や路上などの動態的な「ホームレス状態」に対し、それを解決しようとする動態的なシステムと、見守り助け合うことができる社会を醸成することが必要だと考えます。

 

>上記以外のご質問 

 質疑応答パートでは、ストリートカウントやホームレス統計以外のご質問もいただきました。ここでは、それらについて類似する質問をまとめた形でARCHの見解を述べます。

 

【他分野との関わり・今後の協働について】

 

 ホームレス状態に関わる周辺分野(精神医療、教育、難民、法律、等)との関わり方や、様々な主体(行政、非営利団体、事業者、等)との協働のあり方について、ARCHの方針を問うご質問がありました。

 ARCHの中心メンバーは都市政策やコミュニティデザインをバックグラウンドとしていることもあり、ホームレス状態を巡る諸問題も都市や地域の様々な要因の中で生じる問題であると捉えています。それゆえ、福祉のみならずホームレス問題に関係する様々な分野及び様々な主体と関係を築き協働したいと考えます。その上で、私達は自身のバックグランドを活かし、その地域に住む様々な市民がホームレス状態への働きかけを介してつながり、見守ったり助けあったりする社会を目指すというスタンスを取りたいと考えます。

 

 

【ARCHの今後の展開に関するご質問】

 ARCHの今後の展開に関するご質問がありました。今後のアクションについては、報告会第2部でお示しした下記について取り組んでいきます。

 

 上記について、具体策や政策提案の中身、ストーリーなどについては、随時ウェブサイトにも掲載していきますのでご確認いただけますと幸いです。

 

【他の立場の方の意見・態度について】

 

 ARCHの取り組みに対して路上生活をしている人や行政機関などがどのような意見・態度であるか、というご質問が複数ありました。ARCHが各立場の方に代わって意見・態度をお答えすることはできないと考えているため、これに対しては、回答を避けたいと思います。

 

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 以上、報告会にていただいたご質問・ご意見へのARCHの見解を記しました。

    非常に貴重なご質問、ご意見をいただき、ありがとうございました。今後も、広くみなさまと意見交換する場を設けていければと考えております。どうぞよろしくお願い致します。