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2019夏・日英コラボ連続イベントを実施しました!(その1)

今夏ARCHでは8/17~9/6(7未明まで)の期間、英国のゲスト9名を招いて連続イベントを行いました!各イベントに出演くださった方々、ご来場くださった方々、ご参加・ご協力くださった方々、誠にありがとうございました。

「東とりのアイデアで埋くすをテーマに、東京にたくさんの風景を生んだ連続イベントの報告をぜひご覧ください。

 

【連続イベント第1弾:8/17】

オープニング・アート・イベント@3331アーツ千代田  来場者:約75名

第1弾のアートイベントでは、英国マンチェスターのアート×ホームレス活動プロジェクト「Street Poem(ストリート・ポエム)」と東京の活動プロジェクトらのコラボを実現しました。

開会はStreet Poemの迫力あるパフォーマンスから!ホームレス経験者から成る東京のダンスグループ「ソケリッサ」のメンバーや来場者も加わり、一面の段ボールに黒ペンキを塗りたくります。

黒地に塗った段ボールを乾かす間、主催のARCHより連続イベントの趣旨を紹介し、マンチェスターのStreet Poem、 東京のアート×ホームレスの活動(ソケリッサ、山友会写真部、作家の雀友さん)をお互いに紹介しました。さらに、これらホームレス経験のある人たちが表現するアートに、ARCHが当日プログラムの中で市民の声のコラボを試みることを話しました。

次は、ホームレスの人たちの物語を白ペンキで綴っていきます。英語で書かれたマンチェスターの人々の物語に日本語訳が書き加えられていき、東京の作家・雀遊さんによる路上の物語も書かれていきます。その間、会場にはStreet Poemの音楽とそれぞれの物語の朗読が流れ、皆がその物語に心を寄せました。ソケリッサのダンス、山友会写真部による撮影も同時に行われました。

そして来場者も筆をとります。「私のアクション宣言」と題し、来場者一人ひとりが東京のホームレス問題への思いを、白ペンキで自由に寄せ書きしました。日英のホームレスの人々の物語と東京の市民の声で埋めつくされた段ボールを壁に立てかけ、Street Poemの東京版、一旦の出来上がりです。

ただし、今回の連続イベントのテーマは「東とりのアイデアで埋くす。なので、これで終わりではありません!

カラフルなパレットを持ったARCHのメンバーが登場し、市民一人ひとりの「アクション宣言」をどんどん色づけていきます。やがてその色は路上の物語にも染み込み、Street Poemの白黒のスタイルと東京の市民のカラフルなスタイルが融合した、新たなコラボ作品が完成しました!!

 

【連続イベント第2弾:8/20】

国際シンポジウム@蔵前会館ロイアルブルーホール  参加者:約70名

第2弾の国際シンポジウムでは、アート×ホームレスというアプローチを国際的に展開する英国の団体「With One Voice(ウィズ・ワン・ボイス)」と、アートを住宅や雇用、保健などに並ぶホームレス支援モデルの一要素として近年政策に導入したマンチェスター市の「ホームレス・パートナーシップ」をゲストに迎え、イギリスの知恵に教わりながら、2020年というマイルストーンを迎える東京の都市がどうホームレス問題に向き合っていくのか議論を深めました。

イントロダクションでは、ARCH共同代表の河西が東京のホームレス状態や不安定居住の広がりの現状を紹介しつつ、その解決を公的システムのみに委ねるのではなく、誰しもに居場所がある都市をそこに暮らす私たち一人ひとりが共に創ることを目指すARCHのアプローチについて話しました。「東とりのアイデアで埋くすはまさにそうした都市のビジョンを掲げるものであり、ARCHが行っている市民一人ひとりの「アクション宣言」を集めるという試みも、その表現の一つです。

2つの基調講演では、まずWith One Voiceの4名よりアート×ホームレスというアプローチの意義が統計や個々のストーリーの形で紹介されました。ホームレスの人もそうでない人も、孤立したり自分の声がうまく届けられなかったりする経験が人生の中にはあること、一方で様々な形のアートに触れたり自ら創作する行為によって、誰かとつながっている感覚やアイデンティティが守られている感覚を得た経験が多くの人々の中にあることを、会場のみなさんと一緒に確認しました。これは研究のエビデンスにも支えられている事柄であり、With One Voiceの現クリエイティブ・プロデューサーであるDavidさんが、実際に創作活動を行うことでホームレス状態を脱することができたの自身の物語を共有してくれました。

このように、With One Voiceはホームレス経験のある人々と共に活動を創り、アートの持つ力を強く支持する団体です。彼らがつくったホームレス支援の「ジグソーモデル」(下図右側)は、人間の欲求はピラミッド状になっており、基本的ニーズが満たされることが第一で、アートなどの自己実現ニーズは最後に満たされるものだという従来の考え方(参考:マズローの欲求5段階説)は違う、ということを訴えています。「ジグソーモデル」はより包括的で、ホームレスの人に限らず、あらゆる人々やコミュニティが繁栄することを支えるアプローチであることが話されました。

次に、マンチェスター市「ホームレス・パートナーシップ」の2名による基調講演では、ホームレス人口の急増に直面した当市の関係者らが2015年秋より取り組んできた革新的なホームレス問題解決のアプローチについて、紹介がされました。マンチェスターでは危機的状況の中で意志ある人々が集まり、「これまでとまったく違う方法で問題解決に挑もう」と立ち上がったのです。そして、都市のあらゆるプレイヤーが参画するホームレス憲章の設立、前述のジグソーモデルの政策導入などを達成してきました。

こうした市全体のパートナーシップの取り組みにおいて、憲章の立ち上げ人である支援ワーカーのJezさんは、その核の部分に絶対に譲れない2つの価値があると言います。1つはインクルーシブ(包摂的)であること。すなわちコミットする意志のある誰しもが参画でき、役割を与えられるということです。そしてもう1つは「co-production(共創)」。つまり、ホームレス経験者、専門家、学術者などが等しい発言権を持ち、互いを尊重し、同じテーブルにつくということです。

世界を見渡してみると、日本も含め、ホームレス政策の意思決定の場にホームレス経験のある当事者が含まれることはほとんどありません。しかしco-productionという価値を中心に置くマンチェスター市では、例えば市の支援事業をどのようなものにするか、その話し合いにホームレスの人も必ずいて意見を言う、ということをしています。同じテーブルにつくことは初めは容易ではなく、行政や企業、支援団体、ホームレス経験者など「全員が共通言語を話すわけではない」ことに気付かされたそうです。

「だから言いたいのは、共に創ることを可能にするには、まずお互いが個人的なレベルで知り合いになることが重要なんだ」。パートナーシップのメンバーであり、ホームレス経験者でもあるJohnさんは言います。そうした積み重ねがマンチェスターのホームレス憲章を生み、今も大きなシステムの転換を目指しているそうです。

シンポジウム後半は、いよいよ英国から東京へとディスカッションが広がっていきます。続きの報告はまた後日更新しますのでお楽しみに!

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